1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:商品開発のセオリー スパーキング

39. ニーズ開発 - 序論

「ニーズ・リサーチ」から「ニーズ開発」へ

ニーズの開発について考えてみます。
ニーズ、ウオンツの違いなどいろいろ言われています。しかしここでは、魅力的商品を開発するために、顧客がどんな効用を期待しているかを発見することを目的にし、それらをすべてニーズとして考えていきます。

「ニーズ・リサーチ」という、定型的調査があるのではという幻想があります。
あれば、商品開発、商品コンセプト開発は楽になります。
今の市場状況は、「満腹の王様にごちそうを提案する時代」(任天堂社長岩田氏)です。
満腹の王様=現在の顧客に、どんなごちそうが食べたいですかと聞いても、なかなか的確な答えは得られないでしょう。
おいしい空気はどうですか、空腹になる食品はどうですか、王様に聞いてみることがスタートです。おいしい空気といわれたら、ニーズはおいしい空気です。これが、「ニーズ開発」です。

積極的消費から消極的消費へ

今日の消費は、積極的消費から、消極的消費へ変化しています。
インスタントラーメンのパネル調査で、こんなことがありました。買いたいラーメンは、と聞いたとき「サッポロラーメン」と答えた人が、実際に購入したのは「チャルメラ」でした。理由は「サッポロラーメン」も「チャルメラ」も同じで、その時、店頭で「チャルメラ」が一番安かったことが理由でした。
ぜひこれが欲しいという積極的消費が低下しています。
また、消費者の生活態度には、過剰なものを捨て、シンプルな生活をしたいという人たちが増えています。今は「買わない自由」の時代です。
このような状況で、ニーズをどう発見、開発するかが重要なテーマです。

情報から新しい情報を創造することがニーズ開発

商品開発においては、情報から新しい情報を創造することが重要です。
古い話ですが、本田宗一郎さんが「市場調査無用論」を述べたことがありました。「調査をしても、知っていることしかでてこない、自分は知らないことを知りたいのだ」という趣旨でした。正しい見解でした。

藤岡和賀夫さんが、こんな話をしていました。
有名なイタリアの靴商人の話です。2人のイタリアの靴商人がアフリカに行って調査をした話です。
調査結果は、誰も靴を履いていないという事実でした。
Aという靴商人は、誰も履いていないので、マーケットはゼロだと報告をした。Bという靴商人は、1人が一足履くことがあれば、魅力市場だと報告をした。それに対して、A、Bの靴商人の判断に対して、藤岡さんは、アフリカにはアフリカの人、風土に合う靴を開発しなければならないと語っていました。事実を捉える第3の視点です。
ちなみに、私の見方は、履けば履くほど足が楽になる靴を開発することです。
事実を、どう見るか、そして、新しい情報を創造することがニーズ開発です。

情報には、過去情報、現在情報、未来情報があります。過去、現在から、未来情報を創造することが、「ニーズ開発」です。
現在情報のひとつが、POSデータです。いろいろ役に立っていますが、問題もあります。
今日,Aが100個売れた、Bが50個売れたということは、POSデータでわかります。しかし、Cを店頭に置いたら、200個売れるかもしれない。わかりません。いくら正確に現在情報がわかっても、未来を創造することが出来なければニーズ開発にはなりません。

4WIHからWHYの開発

私どもが考えている「ニーズ開発」とは、4W1H(who,What,When,Where,How)から、Whyを発見することだと考えています。
4W1Hという事実からなぜ買うのか、なぜ欲しいと思うのかを発見することです。これらのことは次回以降述べていきたいと考えています。

顧客と企業で「価値共創」がこれからの「ニーズ開発」

米ミシガン大学教授 ベンカト・ラマスワミ氏が、消費者の意見を聞く今までの調査に変わって、顧客との価値共創の重要性を指摘しています。 
「インターネット、ブログにより個人の企業に対する影響力が高まっている。企業の成長には個人と共に価値を生み出す「価値共創」が欠かせなくなっている。顧客と対話をして顧客が真に満足する価値を共に創造する、従来のように企業が単独で考えた製品やサービスを「すばらしいですよ」と宣伝しても消費者は冷淡になっている。顧客を調査対象とする考えは古い。

米ケンタッキー州のサマーセットという個人用遊技ボートのメーカーがある。ボートの注文を受けると、その顧客に納品するまでの毎日、工場でつくられている状況を公開している。注文主は毎日製造中の自分のボートをチェックし、気に入らないところが有れば電話などですぐ注文を付ける。顧客はイメージ通りのボートが出来満足が得られる。
消費者をボートのファンクラブ会員として組織、顧客のボート進水式には大勢のファンを招待する。そこで消費者の横のつながりが出来、将来の顧客の獲得につなげる。
日本では旅行会社の「クラブツーリズム」。これらの企業は「価値ある経験」を顧客と共有している。真の意味の情報の公開情報公開は企業のリスクを軽減する。」
(米ミシガン大学教授 ベンカト・ラマスワミ 日経産業050610)
これからの、ニーズ開発の方法です。

日本オリエンテーション 松本勝英

バックナンバー一覧 次のスパーキング