1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:商品開発のセオリー スパーキング

50. 商品コンセプト開発スタート-商品の価値は何によって決まるのか

商品の価値とは

 新商品が成功するかどうかは、魅力的な商品コンセプト開発によるところが大きいです。
商品コンセプトを開発するにあたって、大切な基本視点を述べておきます。
「商品の価値は消費者の主観的、相対的満足価値によって決まる」ということです。
客観的で、絶対的なものではなく、主観的で、相対的だということがポイントです。

ロレックスとカシオの時計

60万円でロレックスの時計を買った人がいました。同じ場に、3500円のカシオの時計を買った人がいました。カシオの時計を買った人は、正確さを求めていました。その人には満足できる時計でした。
ロレックスの時計を買った人は、時計は工芸的で文化的商品として捉え、ロレックスを身につけることによって自信を得ることが出来るという点に満足価値を感じていました。どちらとも、主観的、相対的(何かと比べて)満足価値を得ています。

コシヒカリと麦ご飯

魚沼産のコシヒカリを食べている人がいます。おいしいお米を食べることに満足を感じています。麦ご飯(麦飯と呼ぶより、おいしく感じます)を食べている人は、毎日健康的な食事をすることに満足しています。あくまで、主観的で、相対的な満足価値です。

トリスとマッカラン

ある化粧品メーカーの常務と中野のサントリーバーに飲みに行きました。私が誘いました。2人とも60歳を越えています。そのバーで、昔懐かしい「トリス」を飲みました。今時、のどがちょっとひりひりする「トリス」を置いてある店はあまりありません。懐かしい、楽しい青春を感じるウイスキーでした。
私の好物のウイスキーは「マッカラン」です。資生堂パーラーのバーで飲むときには、一杯7000円で「マッカラン30年もの」を飲むことがあります。たまにですが。充実したゆとりの時間を楽しむウイスキーです。同じ私にとっても、場面が違うと求めるウイスキーへの満足価値が異なってきます。
商品の価値は、主観的、相対的満足価値、それも場面によっても異なるものです。コンセプトを開発するときの基本の基本です。

生活メリット、効用、ベネフィットの開発

「商品の価値は、消費者の主観的、相対的満足価値によって決まる」の主観的、相対的満足価値のことを、私どもは「生活メリット」と言っています。マーケティングの世界では、「効用」、「ベネフィット」と通常言っています。
ちょっと抽象的で、社内の共有化が難しい場合は「生活メリット」という言葉の方がわかりやすいと思います。
商品は、誰にどんな生活メリットを提案するのか、消費者は商品にどんな生活メリットを期待しているのか。よりよい生活時間、生活空間、生活方法のために消費者は、どのような「生活メリット」を求めるのか。
このことは、わかっているようにみえて、実際に商品コンセプトを開発するときには忘れがちです。

消費者は快眠を求めていたのだ

昔々の話です。私が、毛布のメーカーから相談を受けたことがありました。毛布が売れなくなったので、どうするかの課題でした。
いつも企業と仕事をするときの、最初の質問は「毛布とは何ですか」「ビールとは何ですか」「ロースハムとは何ですか」。なかなか答えにくい質問です。
メーカーの答えは「毛布は毛布ですよ。いつもお使いになっていませんか」。しつこく聞くと、素材、作り方などの製品に関する話が一般的です。工場を見るとわかりますよ、といわれることもあります。
それでは、消費者が毛布に求める「生活メリット」は何ですか、毛布に期待する効用、ベネフィットは何ですかと聞くと、メーカーの人たちは考え込んでしまうことがよくあります。
「消費者が毛布に求めている生活メリットは、『快眠』では」。
競合の電気毛布は強制的に暖めていて、長時間使用していると不快になるとの話も聞きました。
それでは、『自然な快眠』を提供すれば、消費者は生活メリットに感じ、新・毛布を購入してくれるようになります。
消費者が求めていた、毛布に対する生活メリットは、「自然な快眠」です。この生活メリットを他の競合製品より、よりよく満たす製品を開発することが商品コンセプト開発のスタートです。

日本オリエンテーション 松本勝英

バックナンバー一覧 次のスパーキング