1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:商品開発のセオリー スパーキング

33. 商品開発・成功体質をつくる -8「新商品開発組織の活性化」

ワーク・スモール

 新商品開発の組織は、私のコンサルティングの経験では「ワーク・スモール」が基本です。
マイクロソフトの製品開発は「ワーク・スモール」を合言葉に数人のチームを編成、年齢に関係なく能力本位で「オーナー」に指名。
その「オーナー」は担当業務に対して、本物のオーナーであるビル・ゲイツにいろいろな起案が出来る仕組みになっています。
トップとチームのオーナーが直結することによって、決断とスピードが早まる大きなメリットがあり、高いモチベーション(動機付け)を持つ個人とそれを活かす企業、組織と個人の心地よい緊張がよい成果を上げていきます。

「ツーマン方式のワーク・スモール」

 特に、企画の段階では、「ツーマン方式のワーク・スモール」がよいのでは。一人だと堂々巡りになってしまい、なかなか課題のブレークが出来ないことがあります。また、あまりチームの人数が多いと、お互いが理解し合うのにいろいろな労力が必要になり、みんなが同意するアイディアは特徴がなく、おもしろくもなく、普通になってしまうケースをよく見かけます。
「ツーマン方式のワーク・スモール」のイメージは、テニスダブルスのチームです。欠点を補い、長所を発揮しやすくする組み合わせです。

 私は、ツーマン方式の変形として、一人が2?3の複数のチームに所属、
Aというプロジェクトではリーダーを、Bというプロジェクトではサブの役割をする仕組みを企業に導入しています。
メリットは、いろいろな情報が網の目のようになり、発想を喚起し、責任とリーダー体験を持つことが出来るところです。

ワークスモールの組合せの妙

 ワークスモールの組み合わせの妙の考え方として、元花王の社長だった、常盤文克氏が、漢方の処方を、組織の組み合わせのアイディアとして提案しています。
(参考「モノづくりのこころ」常盤文克『知の「経営」を深める』常磐文克)
『漢方薬の基本は「君・臣・佐・使」という4種類の薬の組み合わせ。君薬は中心になる薬、臣薬は君薬の働きをより有効に発揮させるように君薬を助ける。佐薬は副作用を抑えたりした、君薬・臣薬の働きを調整する。さらに使薬は飲みやすくするなど、処方全体の調和を計る。
このようにして複数の薬の相乗効果をフルに引き出す。ここで注目することは、ある処方では君薬となる薬が、別の処方では臣薬や佐薬として用いられることだ。君・臣・佐・使という使い分けは、あくまでも組み合わせの中での役割であって、それぞれの薬の固定した性能、効果ではないこと。企業の知を高めるには、多様な個の知をいかに上手に組み合わせるかである。そのときに参考になるのが漢方の基盤となる陰陽五行の考え方である』。
組織の「組み合わせの妙」である。

これからの組織は、フォーメーション組織

 変化が速い時代の組織は、フォーメーション組織が重要です。
野球はフォーメーション組織ではありません。2番でショートとか、3番でセンターとか、選手の役割が固定してしまっていて、スピードの速い変化には対応できません。  それに対してサッカーは、役割が試合の状況によって変化してくる組織です。変化に臨機応変に対応するには、試合の状況を選手お互いが判断して、いま自分がどのように動いたらよいのかを決定し、そのように動けるための価値観の共有化と、教育=練習が重要になります。
「サッカーチームの動きを見ていると、社会や組織は意識を持った個人の集まりではなく、無意識を含む複雑精妙なコミュニケーションが実行される『情報システム』と見なした方がよいのでは。自分が他社と競争する孤立単位ではなく、つながった情報流の一部であると考えることも、一種の処方箋では。」
(西垣通氏 東京大学大学院教授 朝日新聞 2003.11.13)
フォーメーション型チーム作りとしての「統知技術の開発」による、鳥の群知能の研究も参考になるのでは。
複雑系の理論によれば、それぞれの鳥に「隣の鳥と同じ早さで飛ぶ」「別の鳥と近づき過ぎたら離れる」「同じ方向に飛ぶ」という三つのルールで鳥は群になって飛ぶ。よいチーム作りのポイントは単純で、明快に各自の役割を認識することではないか。
これからの組織は、フォーメーション組織の考え方がヒントになるのではないでしょうか。

日本オリエンテーション 松本勝英

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