1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

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考えるヒント:商品開発のセオリー スパーキング

29. 商品開発・成功体質をつくる -4「マーケット・シェアー目標」

マーケット・シェアーが利益を規定する

 カテゴリー・ナンバーワンになることが利益を生み出す基本だと「商品開発スパーキング19号」で以前述べました。マーケット・シェアー重視の考え方です。
一つの例を挙げてみたいと思います。下記の図を見てください。

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先発のA社は新商品が成功して得られた利益を、マーケット・シェアーを上げるために再投資をせず、利益として回収してしまった例です。ナンバーワンになれなかったことにより、最大の利益を得る機会を失うことになりました。
それに対して、B社は後発でありながら、利益を再投資し、マーケット・シェアーを高め、1位になることによって、A社より大きな利益を得ることが出来ました。

 ちょっと旧いデータですが、スタンフォード大学で研究したPIMS (Profit Impact of Marketing Strategies)の研究成果でも、マーケットシェアーと利益が強い相関関係を持っていることが理解できます。

  マーケットシェア
10%以下 10~20% 20~30% 30~40% 40%以上
税引前利益
 売上げ
-0.16 3.42 4.84 7.60 13.16
原料・資材
売上げ
45.40 39.90 39.40 32.60 33.00
生産コスト
売上げ
29.64 32.61 32.11 32.95 31.76
マーケティングコスト
売上げ
10.60 9.88 9.06 10.45 8.57
研究開発
売上げ
2.60 2.40 2.83 3.18 3.55
サンプル数 156 179 105 67 87
(資料:PIMS)

マーケット・シェアーが高くなると、研究開発/売り上げは、魅力的商品を開発するための開発費のアップはありますが、利益率はシェアーに相関して向上しています。
まず大事なことはマーケットシェアーを獲得すること、ナンバーワンになること、そして最大の利益を上げることです。

マーケット・シェアー目標を

マーケットシェアーの目標設定をするときに、戦争戦略である「ランチェスター戦略」による、マーケットシェアーと市場におけるポジションの関係が参考になります。この指標をもとに、いろいろな商品の市場のおける状況が見えてきます。
73.9% 独占的条件シェア

ある意味でいう最終目標です。ロッテのガム、オリンパスの内視鏡、富士写真の「写るんです」などが、独占的安定です。トップというか神話的な強さです。
41.7% 相対的安定シェア

トヨタ自動車の国内シェアー目標だった数値です。このシェアーが得られれば一つの目標を達成することになります。しかし、40%以上のシェアー・アップを考えると、シェアー・アップのためのマーケティング投資にたいして、それによる得られる利益が少なくなり、メリットが出てこなくなる可能性が出てきます。
ネガティブ・マーケットアプローチによる、独立マルチブランド戦略が有効になってきます。
26.1% 市場影響シェア

市場をリードし、影響を行使できるポジションです。
19.3% 並列的上位シェア

上位数社が並列的に競合している状況です。大手3社などと言われる状況です。
19%を切ってくると、大手3社の競争から脱落していき、独自の戦略を模索するか、強力な巻き返しをはからなければならない状況です。
10.9% 市場的認知シェア

市場で消費者に認知してもらうには、最低クリアーしなければいけない目標で、新製品導入時の成功第1ステップです。
6.8% 市場的存在シェア

このシェアーを切ってくると、市場に存在できなくなる状況です。
大まかにいうと、7%、10%、20%、25%、40%、70%が、一つのマーケット・シェアー目標です。

マインドシェアー、ハートシェアー

マーケット・シェアーに対して、マインド・シェアーという概念があります。
マーケット・シェアーは現在のシェアーです。マインドシェアーは将来シェアーです。一般的には、次回何を買いますかと聞かれ時の1位のパーセンテージです。現在のマーケット・シェアーは10%、次回使用意向で1位のパーセンテージが5%(マインド・シェアー)だと、このブランドは下り坂で、将来は大問題を抱えている可能性があります。
マーケット・シェアー10%、マインド・シェアー15%だと急速に成長していく可能性があると読めます。
マインド・シェアーは将来を把握するために重要な指標です。
マインド・シェアーを高めるには、商品そのものの魅力が大事になりますが、消費者の注意を引き、消費者の心に中に共感が得られる情報を発信し続けることが大切になります。
以前、ソニーのSABフォーメーションの話を聞いたことがあります。
S;StarEpochMakingDesign商品を、10%
A;AbilityDesign 重点商品を20%
B;BisinessQualityKeep商品を70%
の構成で、デザイン、開発、販売をする戦略を構築して、ソニーへのロイヤリティを高めるマーケティング展開です。
StarEpochMakingDesign商品はマインド・シェアー、ハートシェアーを高める戦略商品です。

日本オリエンテーション 松本勝英

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