1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「マツモトミネラル」

マツモトミネラル第145号

配信日:2005年10月04日

第145号
『ロボットの未来』『自己慰撫』『顧客と企業で「価値共創」』『人格神』『遊びと文化と経済』


マツモト・ミネラルも、この号で7年目に入ります。
これも、読んでいただけるみなさんのおかげです。
社内で回覧してくれる方も多く、隠れ読者も相当いらっしゃるようで、
心しなければと考えています。

前回の「ソニー最大のミス」については、企業の方々から、経営者の重要性を
指摘するご意見をいただきました。
読んで感想、ご意見をいただくと励みになります。

■『ロボットの未来』
★解  説
ロボットの未来 アシモフのロボット工学4原則 
1.ロボットは人間に危害を加えてはならない。また何も手を下さずに人間が
 危害を受けるのを黙視してはならない。
2.ロボットは人間の命令に従わなくてはならない。ただし、第1原則に
 違反しない場合に限る。
3.ロボットは自らの存在を守らなくてはならない。ただし、それは、第1の
 原則、第2の原則に違反しない場合に限る。
4.ロボットは「人類」に危害を加えてはならない。また何も手を下さずに
 人類が危害を受けるのを黙視してはならない。
この原則は実際に適切であり、今日の多くのシステムも気づかずに従っている。
      「エモーショナル・デザイン」ドナルド・A・ノーマン(新曜社)
★ミネラル
 一般的にいわれている、ロボット三原則に対して、ロボット四原則である。
アシモフは、第一の原則人間を人類に変えて追加をしています。人類を守るた
めなら、個々の人間に危害を与えることを認めているのです。
今人類の危機のために何をすべきか。アメリカは、日本は、世界は、そしてロ
ボットは。
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■『自己慰撫』
★解  説
「自己慰撫」求める新しい世代
休刊の相次ぐ写真雑誌状況とは裏腹に、世は写真ブームなのである。
たとえばアルバイトで食いつなぐフリーターの女の子が夜には写真学校に通い、
休日には、セルフポートレートや、自分の部屋に遊びに来た友達の写真を撮っ
ている。
そんな自己慰撫写真現象のようなものが90年代にブームとなり、いまだに若者
の間では写真は手軽な自己確認の道具として持てはやされている。
              藤原新也(作家・写真家)朝日新聞 2001.8.7

★ミネラル
 慰撫とは、なだめること、慰めいたわることの意味です。(「広辞苑」)
携帯電話、カメラで自分を撮ることは、自己確認なのだ。しかし写真と自分は
全然違うのでは。それでも自己確認をしたいと思う不明確な私がいるのだ。
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■『顧客と企業で「価値共創」』
★解  説
 顧客と企業で「価値共創」にインターネットを。
ブログにより個人の企業に対する影響力が高まっている。
「企業の成長には個人と共に価値を生み出す「価値共創」が欠かせなくなって
いる。顧客と対話をして顧客が真に満足する価値を共に創造する。
従来のように企業が単独で考えた製品やサービスを「すばらしいですよ」と
宣伝しても消費者は冷淡になっている。顧客を調査対象とする考えは古い。

米ケンタッキー州のサマーセットという個人用遊技ボートのメーカーがある。
ボートの注文を受けると、その顧客に納品するまでの毎日、工場でつくられて
いる状況を公開している。注文主は毎日製造中の自分のボートをチェックし、
気に入らないところが有れば電話などですぐ注文を付ける。
顧客はイメージ通りのボートが出来、満足が得られる。消費者をボートの
ファンクラブ会員として組織、顧客のボート進水式には大勢のファンを招待
する。そこで消費者の横のつながりが出来、将来の顧客の獲得につなげる。
日本では旅行会社の「クラブツーリズム」が同じ例。
これらの企業は「価値ある経験」を顧客と共有している。真の意味の情報の
公開情報公開は企業のリスクを軽減する。
  米ミシガン大学教授 ベンカト・ラマスワミ 日経産業新聞2005.0610

★ミネラル
 顧客との「価値共創」。なかなか難しい課題がありますが、インターネット
を通じて双方向で知恵を出し、魅力、満足を創出する仕組みが求められていま
す。まずは情報の公開がスタートになるのでは。   
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■『人格神』
★解  説 
アリエティは、自己と非自己の区別がない「一次過程」、非自己が認識される
が、まだ自己との区別があいまいな時代と、現在私たちが日常に感じている自
我意識の時代「二次過程」。自我というのは、自己よりもさらに成長、進化し
た、倫理観、道徳観などを備えた意識状態。
通常、20歳を超えたところでこのような意識状態になる。アリエティはさら
に意識が進化し、自我意識を超えて、もう一度自己と非自己のない、一元的な
認識を自覚し始める「三次過程」。
一次過程では、新皮質以外のところから強いエネルギーで情報が発信される。
二次過程の思考は、一次過程の認識で発信された情報を、新皮質で合理的に
整理される。言語を駆使して、現代の人類が理解できる認識に仕上げた。
芸術の世界などの三次過程は言語が表現する以上のものを提示する。

さらに意識が進化すると「悟り」に至る。「悟り」にいたらなくとも、自我を
否定しただけ、信仰を得ることができる。自我を抑制し、謙虚になって、自然
に対し畏敬の念を持ち祈ることができる。
意識は未発達の時は、自然のすべてに神をみるアニミズム、自我が確立されて
くると「人格神」を抱くことになる。人格神を超越したところに、神のない信
仰の世界がある。人格神を超越するまで、我々は苦しむのではないか。
              柳澤桂子「宇宙の底で」 朝日新聞2005.03.08

★ミネラル
 三次過程に達するときには、強い外的要因が必要になるのでは。
不死の病になる、倒産して一家バラバラになってしまう状況になる、最愛の人
間を失うなどの「負」を背負うことが機会になるように感じます。
ぬるま湯的な生活の中からは生まれてこないのでは。
「負」を背負う、しかし「負」を背負うことの怖さから逃れたいという自分。
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■『遊びと文化と経済』
★解  説
 遊びの中にこそ人間のもっとも創造的で豊かな部分が表現される「ホモ・ルー
デンス」的人間論。
「必要に基づく消費」という消費概念から離れた消費や浪費の習慣が、人間社
会には普遍的に見られる。
(ポトラッチ)消費という行為にはポトラッチのように、蕩尽性、遊戯性が埋
め込まれている。
競争志向に基づく進歩主義が人間の幸せには結びつかないことに皆が気づいて
きた。
プロテスタント的な進歩主義に対して、未開社会での1日働けば1週間寝て
暮らせるような、苦痛の労働を通じて生まれる利便性や機能性という価値より
も、遊びとしての労働から生まれる快楽性や文化的な価値の方を人々は高く評
価し始めている。

あらゆる対立項統合する機能を持った、トリックスター。
1つの組織の収まらず複数の世界で生きられる両義的存在としてのトリックス
ターの存在。
企業ではデザイナー、広告部門の人が担うはずだがそのようになっていない。
小林一三は遊びのネットワーク、駅頭や電車内、街頭での観察をもとに蓄積さ
れた豊かな暗黙知をベースに、それを新しい概念やコンセプトに具体化してい
く文学者的、あるいはデザイナー的な能力を持つ経営者だった。
「遊び」「蕩尽性・遊戯性」「遊びとしての快楽性」「トリックスター」
「サブカルチャー」「街頭アカデミー」「分配・消費」「市場の外部から」
   山口昌男 東京外国語大学名誉教授 日経新聞2005.05.15?2005.05.23


★ミネラル
 遊びの有用論です。喜々として仕事をする、会社を辞めないと、そのような
環境が生まれないのは寂しいですね。競争社会より、共創社会になると少しは、
喜々として仕事が出来るようになるのでは。
トリックスター的な生き方が出来ればおもしろいですね。大江健三郎の「M/
Tと森のフシギな物語」(岩波書店)のトリックスターの物語はおもしろかっ
たです。   

                 日本オリエンテーション 主宰 松本勝英

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★マイカレンダー9月20日(火)?10月3日(月)    
関西へ出張、「生活ナレッジ」の検討会。消費者の生の声をもとに発想する
ことが重要です。消費者用語と、メーカー用語のズレは、消費者との目線がずれ
ていることにつながります。消費者の生の声をもとに開発をスタートする仕組み
をぜひ企業に定着させたいと考えています。
大阪で、4社の方々とお会いし、商品開発課題についてディスカッション。
疲れましたが収穫あり。人と会って、触発される喜びを感じました。

コンサルティング仕事。魅力ターゲットのターゲット・プロフィルを明確にする
こと。
ターゲットが明確にならないと開発がぶれてしまうことがあります。

コンサルティングの打ち合わせ、一つは生活ソリューション研究から、新規カテ
ゴリー商品の開発。商品の問題より、生活問題の研究の必要性が高まっています。
他は、大型ブランドのリニューアール、新規チャネル開発による商品開発など。

セミナーは「商品開発プログラムのたて方」28,29日の両日。外観開発とし
てのネーミング、パッケージング。気づき力を高めるネーミング、商品実感を高
めるパッケージ、競合商品との差別化をネーミング、パッケージングでどう付け
るか。
2日目は、新商品導入プランづくり。商品コンセプトに基づく、オピニオン開拓、
口コミ開発、ストアカバー計画、トライアルユース・プランなど、市場導入の重
要点。
セミナー参加者と懇親会。2次会まで参加、生の声が聞けて有意義でした。公的
関係から私的な関係になり、関係が深まります。

イギリスの男性と結婚して、イギリスに定住する女性の、新しい船出の送別会。
企業でいろいろいろな実績を上げた方で、イギリスでどんな暮らしをするのか
興味津々です。「ボリージヤ」という私の行きつけの店でしたが、彼女は「ボイ
ジャー」に似ていて幸先よしとのことでした。

土・日、一人で朝一番に映画を見るは「亀も空を飛ぶ」(岩波ホール)を見まし
た。アメリカのイラク侵攻時の、子ども達の経験をリアルに、そして幻想的に描
いている、真に悲しく、人間のつらさを感じる映画でした。
11月25日迄です。ぜひご覧ください。


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 ■□■ 「MATSUMOTO・MINERAL」
 ■■■ 第145号 (2005/10/4) (c) 1999 Japan Orientation
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