1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「SDP:Sensory Design Program−感性価値設計開発研究所」

【SDP:Sensory Design Program メルマガ】第17号

配信日:2013年12月2日

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■■■        官能開発のメールマガジン
■□■   ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■     発行者:日本オリエンテーション
■□■       毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.17□■
日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、同高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰松本勝英 の共同メルマガです。お蔭さまで2年目の17号になりました。

◆INDEX
1.『嗅覚とフレーバー』大西正巳
好むと好まざるに拘わらず、香り/匂いのハナ(鼻)リシスはますます重要になると思います。

2.『官能特性の把握はメーカーの言葉で』高橋正二郎
U型官能評価では官能特性を消費者を評価していただきますが、評価に使用する言葉はメーカーの言葉、つまりメーカーのモノつくり文化が反映した言葉で把握することが大切です。

■「嗅覚とフレーバー」大西正巳
酒類・食品の消費場面で意識的あるいは無意識に香りを嗅いでいる光景を多く目にします。以前よりも食材の品質や特徴を官能的に判断する傾向が増していることも関係していると思います。昔は出された酒や料理の匂いを嗅ぐのは失礼とされたものですが、現在では色々な場所で飲食の直前にさり気なく香りを利き、口に含む前後のフレーバーや見た目との官能的な差を確認する、またそのブロセスを楽しんでいるように思えます。
現在は生活空間の無臭化志向の一方で香り満載の様々な製品が溢れつつあり、好むと好まざるに拘わらず「香り/匂い」に意識が向く時代だと言えます。ただ、芳香と臭みは紙一重であり、個々の成分濃度や他成分との微妙なバランス、そして外部の状況と関連情報によりいくらでも官能的な印象が変わるため、香りの良し悪しの仕分けや見極めは簡単なことではありません。森羅万象は陰と陽が対になって表れ、分離することは不可能と言われるように全てのフレーバーも陰と陽/闇と光の両面を併せ持ちます。そのあり方でモノの個性が決定づけられると思いますが、フレーバーの臭みとうまみの“狭間”からやみつきを誘う独特のおいしさや魅力が醸し出されることもあるでしょう。また適度な暗闇があるからこそ明りが映えることもあります。まずは様々なモノや現象から漂ってくる香りを素直に感じ取り、自分の官能的なモノサシを確立していくことが重要です。同時に他人の感じ方や表現の仕方との違い(感覚の方向性とキョリ感)を常々把握しておくことも必要です。ハナ・リシス(鼻・分析)つまり嗅覚を駆使すると香りだけではなく色々な「匂い」にも鼻が利くようになると思えます。そしてシタ(舌)/ノド(喉)/ハダ(肌)などのリシス感覚も鋭敏になり、官能評価情報の充実にもつながると期待できます。
ヒト遺伝子は約32000個あり、そのうち視覚に関係する遺伝子は3〜10個、味覚に関係するのは5〜30個、そして嗅覚に関係する遺伝子は500〜700個と桁外れに多いと言われています。つまり嗅覚は遺伝子に支配された原始的、本能的な感覚となります。一方、視覚はヒトの進化の過程で大脳を発達させ、脳内の神経ネットワークを活用することで遺伝子を補ってきました。ヒトの遺伝子の約2%も匂いに関する遺伝子が占めているという事実は、生活していく上で「嗅覚」という感覚が極めて重要であることを示しています。
嗅覚を刺激するものとしてフレーバー成分が重要ですが、その中にも「官能」を有するものが多々あります。と言っても、分子構造の一部に反応性に富む「官能基(または特性基)」と呼ばれる部分が含まれていることを意味しています。そして多様な“官能”基の働きがフレーバー固有の性質(香り・味わいの特徴や揮発性など)を決定づけている面があります。一方、我々の個性や嗜好の形成にも感覚/官能的な刺激の積み重ねが次第に影響していくと考えられます。
人の感覚器官にフレーバー分子が到達し知覚しますが、ある意味では有機体としての人とフレーバーの官能基との間でも共鳴や反応が生じ、立体的でゆらぎ溢れるおいしさが感じとれるのだと思います。

■「官能特性の把握はメーカーの言葉で」高橋正二郎
創造的官能評価を用いて感性価値の開発をするとき、当然のことながら言葉、官能用語が必要になります。この官能用語は「モノづくりのための言葉」で感性価値を創るための言葉です。また、感性価値を扱う言葉は創るだけではなく、感性価値をお客さまの琴線に触れる訴求するための「伝える言葉」も必要になります。さらに、お客さまの求めている感性価値を確度高く把握するためには、「集める言葉」も必要になります。つまり、感性価値を扱う言葉としては、「集める言葉」、「創る言葉」、「伝える言葉」から成る【集・創・伝】の言葉の体系化が必要と考えられます。
その集める言葉ですが、U型官能評価の現場ではいつも議論になります。この官能評価は、対象となった消費者の方にテスト品を評価していただく訳ですが、嗜好に加えて、官能特性も併せて評価していただきます。そのとき使用する言葉として、メーカーがモノづくりの現場で使用している言葉をそのまま使うか、テストの対象者に親しみのある言葉に直して使うかで意見が分かれます。U型官能評価は、市場調査の商品テストの形態に準じますので、実施・運営には市場調査のノウハウも必要になります。市場調査の運営上、対象者の「回答のしやすさ」ということも大事な運営要因になります。例えば、購入先の選択肢として「生活協同組合」をあげるとき、正確な名称よりも「生協」の方が誤解を防げるようなら、誤解のない方を採用します。また、食品での「えぐみ」とか、シャンプーでの「きしみ」などは、わかりやすい言葉の言い換えをテスト運営担当者から求められます。
メーカーが官能評価の現場で使用している言葉は、官能変数として定義され、尺度まで構成された言葉です。これに対して、わかりやすく置き換えた言葉は誰からも定義をされていない言葉で、確かな基準はありません。メーカーの言葉とテストで使用した言葉との間に齟齬が出たときは、どちらかを基準にする必要があります。また、消費者の嗜好や特性の捉え方も、結局はメーカーの言葉ではどうなのか、ということが把握できないと具体的な手が打てません。つまり、テストで使用する言葉は、メーカーの言葉を中心に情報を収集するのが良いのです。 ですから、ここでの「集める言葉」は、メーカーのモノつくり文化を反映させたメーカーの言葉をそのまま使うことをお奨めします。また、言い換えた言葉の併用も差し支えありませんが、結局、メーカーの言葉とのすり合わせが必要になります。最後に、得られた結果は、参考品を前に置きながら、データをにらめっこで齟齬を埋めていく作業が必要になります。
この他にも、自由記述などのお客さま発想の情報などは、別の方法でスリ合わせをすることになりますが、この件につきましては次回、紹介させていただきます。

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 ・お客さまの共感を呼ぶ感性価値の溢れた「生活DELIGHT」の商品アイデアを提供します。
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≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。

■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。

■■まつもとかつひで
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを30年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。

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