1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

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考えるヒント:メルマガ「SDP:Sensory Design Program−感性価値設計開発研究所」

【SDP:Sensory Design Program メルマガ】第7号

配信日:2013年2月1日

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■■■        官能開発のメールマガジン
■□■   ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■     発行者:日本オリエンテーション
■□■       毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.7□■
日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、同高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰松本勝英 の共同メルマガです。

◆INDEX
1.『官能"行動"のリズムを大切に』大西正巳
官能(みる・利く)リズムは、考える・表現する・アイデアを膨らませるというリズムに結び付きます。まずはベースとなる生活のリズムを大切にしたいものです。
2.『デザインするしくみをつくり、人材を育てる』高橋正二郎
味覚、嗅覚、触覚にかかわる感性価値創造のしくみづくりや人材の育成は、各メーカーが独自に実施しているのが現状です。より高みを目指すためにはSDPの考え方が必須と思われます。
3.『五感を刺激する擬音、擬態語を考える』まつもとかつひで
言葉が五感を刺激する、オノマトペ(擬音、擬態語)を考えてみました。

■「官能"行動"のリズムを大切に」大西正巳
京都工繊大・伝統みらい研究センターで行った「匠の技」の解析結果によると、名人・達人に共通する技の特徴は、「再現性がある、リズミカル、姿勢が良い、よく見ている、熟練技術の習得に並々ならぬ努力と鍛錬を行っている」となっています。テイスティングのような官能の技も本質的にはこれらと共通する特徴になると思います。酒類の官能評価やブレンドにとって毎朝の9〜12時はゴールデンアワーです。ブレンダーの朝は早く、まずは官能感度の最も良好なこの時間帯に向けて体調や官能環境を常に管理しています。そして心を無にしてゆったりと朝一番のテイスティングに臨むと、官能力と意識にスイッチが入り、官能・感覚リズムが始動します。パソコンのスイッチよりもアナログな官能スイッチを入れる方が心身はリズミカルになり、やる気が増しそうです。熟練ブレンダーになるとモノをよくみる、官能データやブレンド結果に再現性がある、というスキルの高さだけでなく、官能評価に集中している時の姿勢と動作が美しいという特徴も表れてくると思います。
またブレンダーは、官能時の「型」とリズムを重視するだけでなく、道具(官能グラス/備品)やサンプルをとても大切に扱います。官能の準備やサンプルの調製にも万全を期し、そして得られたデータを丁寧にまとめて考察します。つまり官能評価の行動リズムを中心にして、その前後のリズムもマネージし全体が「型」になっています。心構えと作法のルーチン化とも言えますが、ある種のゆらぎのリズムが織り込まれていますので自前の「型」を確立すると、様々な官能状況への対応力も強化されます。一連の官能行動の「型」が神経を静め、集中させてくれる一方で時には人の思考に喝を入れ、色々と鍛えてくれることをブレンダーは知っています。例えば官能グラスを洗い、磨くという単純な作業にもリズムがある大切な仕事ですが、心を込めて手で洗うと問題が整理され、アイデアが生まれてくることがあるからです。
ブレンダーは揺るぎない「思想」を背景に品質を創り、守り、そして伝えていく使命があります。それを確実に支えるのが分析力/評価力、企画力/デザイン力、技術力等になりますが、官能スタイルを磨きリズムよく実践する中から総合的に身に付けていくものだと思えます。

■「デザインするしくみをつくり、人材を育てる」高橋正二郎
商品の価値の構造を考えると、価値の全体は次の3つの価値、実質価値、感性価値、記号価値から成り立っています。食べ物でいえば、実質価値は「お腹が一杯になる」とか「栄養がある」ということです。一方、感性価値は、「おいしい」とか、「この辛さ、タマラネェー」ということが相当し、記号価値は「魚沼こしひかり」や「大間のまぐろ」のようなブランド品や、「有名店で食べる料理の味は格別」というようなありがたさが相当します。ところで「魚沼こしひかり」も、この記号価値のもとは「おいしい」であり、さらにお米としての栄養も備えているものです。このように、ほとんどの商品が実質価値に感性価値や記号価値が溶け込み、総合価値という形でお客さまに価値を訴え、提供していることになります。
50年もの昔になりますが、ホンダのCB72というオートバイに接しました。エンジンに眼をやると、そのフォルムのもつ躍動感や高性能感に暫し眼が釘づけになったことを覚えています。自動車やオーディオ機器が平凡なデザインだったら、性能がいかに優れていようとも買うことをためらってしまうでしょう。パッケージも含めて、商品の実質価値をデザインなどの感性価値でサポートすることは商品の総合価値を高める重要な要素になります。
一般にデザインと呼ばれる視覚にもとづく感性価値の創造については、美術系の大学を始めとする教育機関があり、これに続く実績のある様々な現場があり、仕事のしくみや人材の育成は社会の中に確立されています。これに対して、味覚、嗅覚、触覚などの感性価値については、価値の創造を具体的に教えたり、しくみを考えたりする機能が社会にはほとんど存在していません。味覚についての教育機関として各種の料理学校などが考えられますが、メーカーが味のデザインとして採用できるものではなく、大学の食物系の学科でも、価値ある味の開発というような講座や講義にはあまり聞き覚えがありません。したがって、このような感性価値の開発のしくみや人材の育成は、各メーカーが独自で固有に取り組まなく てはならないのが現状です。
味、香り、感触もデザインすることが大切なことは明白です。デザインのしくみをつくり、人材を育てる、これがSDPであり、より高みを目指してみなさんとつくり上げていきたいと考えています。

■「五感を刺激する擬音、擬態語を考える」まつもとかつひで
「ザブ」、「ダッシュ」は五感を刺激する擬音、擬態語です。
擬音語は、「おとまねことば」、さらさら、ざあざあ、わあわあ。
擬態語は、「ありさまことば」、聴覚以外の感覚を表す。ゆったり、ふらふら、にやにや。
日経新聞『食語のひととき』で、早川文代さんが、オノマトペの力を語っていました。
「オノマトペ(擬音、擬態語)の力。炭酸飲料の泡が、はぜる様子を表す『しゅわしゅわ』。この「食語」の浸透には明らかな年齢差(若者言葉)がある。しかし、若者でなくても、『しゅわしゅわ』が醸し出す雰囲気は容易に想像できる。オノマトペの力であろう。オノマトペというのは擬音・擬態語のことである。サクサク、パリパリ、しっとりなどがある。ある朝の女子高生の会話『生卵で口がまったりしたところを、シュワーッとコーラで流す。これがチョーうまい』。彼女の言葉が私にリアルに迫ってきた。しゅわしゅわは、泡が細かくて消えにくいビールには使わない。しゅわしゅわは泡が消えていくときの表現なのである。オノマトペは感覚をストレートに表す、原始的であるが、同時に厳密で、繊細なも のだ。だからこそリアルなのである。」
英語の擬音語の例としては、マツダのブランドメッセージの「Zoom Zoom」は日本語で言えば「ブーブー」。子どもがおもちゃを走らせるときに言う音だ。少しやんちゃなイメージで、何でもやれるということを上手く言葉にしたのでは。
オノマトペのパターンとしては
A (ふ)
Aッ(きっ・さっ・ぴっ)
Aン(かん・がん・ぴん)
Aー(さー・すー・ぐー)
AA(だだ・へへ・ふふ)
AッA(かっか・さっさ・ぱっぱ)
AッAッ(くっくっ・ぴっぴっ・ぽっぽっ)
AーAー(かーかー・ぐーぐー・ぴーぴー)
AB(どさ・どき・どて)
ABッ(どきっ・ぼかっ・むかっ)
ABン(くすん・ちくん・ぱりん)
ABリ(きらり・ちくり・ぺろり)
AッBリ(さっくり・ざっくり・ぴっかり)
AンBリ(こんもり・こんがり・ぼんやり)
ABAB(キラキラ・しこしこ・ぴかぴか)
ABB(うふふ・ひゅるる・ずおお)
(「犬は「びよ」と鳴いていた」山口仲美氏)
オノマトペ(擬音、擬態語)を活用して、五感を刺激し、魅力的な商品の訴求を考えるのも有効では。

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◆皆さんのご意見、投稿大歓迎です。
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◆プロの知恵によるカウンセリング、コンサルティングを受けてみませんか
 ・SDP研究所の官能開発のカウセリングを導入してみてください。
 ・お客さまの共感を呼ぶ感性価値の溢れた「生活DELIGHT」の商品アイデアを提供します。
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≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。

■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。

■■まつもとかつひで
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを30年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。

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■□■「SDPメルマガ」
■■■ 第7号(2013/02/01) (c) 2012Japan Orientation
■□■ 発行者 日本オリエンテーション 大西・高橋・松本
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