1970年から、新商品開発・マーケティングの人材育成のセミナー・コンサルティングと新商品開発戦略、新商品開発システム革新の仕事を続けています。

日本オリエンテーションは、マーケティングをR&Dする事務所です。
考えるヒント:メルマガ「SDP:Sensory Design Program−感性価値設計開発研究所」

【SDP:Sensory Design Program メルマガ】第4号

配信日:2012年11月1日

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■■■        官能開発のメールマガジン
■□■   ≪SDP*研究所メールマガジン≫
■□■     発行者:日本オリエンテーション
■□■       毎月1日発行(創刊 2012/08/01)
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■□SDPメールマガジン No.4□■
日本オリエンテーションSDP研究所客員研究員 大西正巳(元サントリー)、同高橋正二郎(元資生堂)、日本オリエンテーション主宰松本勝英 の共同メルマガです。

◆INDEX
1.『官能力は感脳力』大西正巳
全ての人には優れた官能力が備わっています。潜在的には差はありませんが、現実の官能力はその人の官能意欲(問題意識)、官能条件、そして行った官能時間との関係で決まってきます。
2.『感性価値のコトバの決め方』高橋正二郎
感性価値を客観的に記述するQDAにはコトバと目盛の準備が必要です。コトバは全体を表わすコトバと部分を表わすコトバがあって、QDAに必要なのは、部分でしかも全体を操作できるコトバということになります。
3.『「クオリア」を開発する』まつもとかつひで
主観的に感じ取る質感である「クオリア」には、感覚的クオリアと志向的クオリアがあります。クオリアを商品開発に適用して、ユニークな質感を開発してみましょう。

■「官能力は感脳力」大西正巳
文化勲章受章者の洋画家・中川一政画伯の美術館のパンフレットの中に次のような「画の見方」という一文があります。
『画の見方と云えば画をきゅうくつに考えないで見る事です。富士山を見て良い景色だと思います。しかしよい景色は富士山ばかりではありません。富士山ばかりをよい景色と考えすぎると、天の橋立へ来るとわからなくなります。そういう風にきめずに見る事です。こういう風にすれば観賞の範囲が広くなります。それからわからないものはわからないものとしておいて、わかるものを先ず味わって行けばよいのです。人というものは其人の心の深さだけしか見る事が出来ません。深い心の作品を見るにも自分の程度だけしかわかりません。いつ迄見ていても良い絵というのは、自分の心が成長して行ってもまだ奥底のわからぬ絵のことです。自分にとけぬ謎のある絵です。自分のわかる程度で素直に見てゆく事です。理屈ぜめにして見てゆかぬ事です。自分が成長すればわかるだろうと思う事です。そして成長する事を考えたほうが近道なのです。こういう風にすれば観賞の内容が深くなって行きます。以上のように観賞の広く出来るように深くなるように二つあわせてゆく事で見方が鍛えられると思います。』
この「画の見方」はモノの"官能評価"に通じる示唆に富む言葉だと思います。「香り・味わい」というのは、姿かたちの見えない絵画のようなものですが、感覚を豊かにして脳で感じ取り、そのイメージをビジュアル(例えばQDAのフレーバープロファイル)化してみることから始まります。集中力を高めて物言わぬ香り・味わいにインタビューし、素直に特徴を教えて頂くという謙虚さが必要になります。そして良し悪しや好き嫌いの判断を後にして、感じた特徴の質と強度を絵具(官能用語)でキャンバス(チャート)に描写していくことが大切です。
官能評価力は必要条件としての官能力と十分条件の評価力が合わさり効果を発揮するものですが、まずは官能力を日々磨き、官能経験を積みながら評価力を養っていきたいと思います。

■「感性価値のコトバの決め方」高橋正二郎
おいしさや心地よい香りのような感覚・感性に関わることがらは客観的な情報になりにくいことから、前回は感性価値情報の受け渡しや設計の検討のためにQDAというクモの巣状のレーダーチャートをつくるという話をさせていただきました。このQDAをつくるためには2つの要素が準備されなくてはなりません。
1つはQDAの周りに配したコトバで、もう1つは目盛です。今回は、どんなコトバを準備すればいいのかをお話します。例えば、ヨーグルトの味についてのコトバを準備しようとして、思いつくままにコトバを挙げたとします。酸っぱい、甘い、おいしい、ほのかな甘さ、健康的、好き、レモンとは違う酸っぱさ、というように次々と出てくると思います。これらのコトバを眺めて整理してみましょう。すると、おいしい、好きはヨーグルト全体についてのコトバであるのに対して、酸っぱい、甘いはヨーグルトの部分を示しているコトバになります。つまり、コトバには大小があります。おいしい、好きという大きなコトバは目標を表わしていて、ヨーグルトはおいしい、好きをめざして作られます。おいしい、好きというコトバは目標系という定義もできます。
一方、甘い、酸っぱいは部分を表わしますが、酸っぱい、甘いの具合でおいしい、好きは変わってきます。つまり、酸っぱい、甘いはおいしい、好きを操作するコトバで操作系という定義ができます。また、健康的というコトバも部分的で、酸っぱい、甘いよりは大きめですが、もっと大きな違いは操作ができないことです。健康的はやさしい、品があるというコトバと同じように操作はできませんが、価値の方向性や特長を示すことができます。さらに、ほのかな甘さは甘さの程度を示し、レモンにない酸っぱさは同じ酸っぱさでも「どんな酸っぱさ」という酸っぱさをさらに分解した特殊な酸っぱさを示しています。正確な記述には欠かせないコトバとして準備が必要になるでしょう。
QDAに準備すべきコトバは、全体への操作可能な部分に分解されたコトバが最重要になります。部分に十分分解されているか、目標に向かって操作が可能か、という視点からコトバを選択し、構成してはいかがでしょうか。

■「「クオリア」を開発する」松本勝英
脳の中の、完熟の桃の「クオリア」を開発する。映画「ALWAYS三丁目の夕日」も「クオリア」開発では?
・「クオリア」とは
茂木健一郎さんは『心を生み出す脳のシステム』の中で、クオリアの定義を主観的に感じ取る質感で、感覚的クオリアと志向的クオリアがある。
・感覚的クオリアとは「赤い色の質感」。視覚で言えば、色、透明感、金属光沢など、外界の性質が鮮明で具体的な形で感じられるときの質感、言語化される以前の原始的質感。
・志向的クオリアとは、「ああこれはバラだ」と認識するときの心のなかに立ち上がる質感。言語・社会的文脈の下におかれた質感、何かに向けられている質感。
感覚的クオリア、志向的クオリアの区別が、自己の「内」と「外」、「過去」、「現在」、「未来」という空間的、および時間的な位相構造を支えていると述べている。
≪「クオリア」を商品開発に適用した私の経験≫
・ストロベリーのアイスクリームの開発
皆さんの脳の中にある、完熟の桃の「クオリア」をイメージしてみる。完熟の桃を食べる時の、歯が入っていく感触、歯が噛み砕く弾力、味が口中に広がっていく感覚、鼻空に抜ける香りの拡がりなどの「クオリア」のあるストロベリーアイスクリームを開発する。映画「ALWAYS三丁目の夕日」も時間軸の「クオリア」を映画にしたものでは。ユニークな質感を「クオリア」の開発をしてみませんか。

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◆皆さんのご意見、投稿大歓迎です。
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◆プロの知恵によるカウンセリング、コンサルティングを受けてみませんか
 ・SDP研究所の官能開発のカウセリングを導入してみてください。
 ・お客さまの共感を呼ぶ感性価値の溢れた「生活DELIGHT」の商品アイデアを提供します。
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≪SDP研究所メンバー紹介≫
■■大西正巳(おおにしまさみ)
◆サントリー(株)山崎蒸溜所・工場長、ブレンダー室長を歴任し、主に蒸溜酒の商品開発と技術開発を34年間担当。◆サントリー退社後、洋酒研究家及び酒類、食品の官能評価、品質開発、技術開発のコンサルタントとして独立。現在、鹿児島大学・農学部・非常勤講師を兼務。◆「おいしさ」を官能により評価すること、そして魅力的な「おいしさ」をデザインし、開発することを主テーマとして取り組んでいます。

■■高橋正二郎(たかはししょうじろう)
◆(株)資生堂で商品開発、官能評価、市場調査を担当。「データは手羽先」というスローガンを掲げ、鳥瞰的な統計理論の活用に加え、虫視的な生活観察と官能検査の考え方を導入し、商品開発に直結したデータマイニングを追求してきた。◆現在は、官能評価の創造的活用により、味覚・嗅覚・触覚に関わる感性価値の開発を中心にコンサルタントやセミナーで活動中。◆究極の目標として「触覚の美学」を掲げるも、道半ば。

■■まつもとかつひで
◆シーメンスを経て、1970年マーケティング・コンサルティングを業務とする(株)日本オリエンテーションを設立。 ◆食品、トイレタリー商品、薬品、家電商品、ミュージシャン、出版など、パッケージ商品、耐久消費財およびサービス商品のマーケティング、新商品戦略の立案を担当。「商品開発プログラムのたて方36時間」セミナーを29年に渡って講演、3000人以上の受講者がいる。 コンサルタント歴は、毎年10〜15プロジェクトを指導。今までに300社以上の商品開発戦略、商品コンセプト開発、商品開発システムの革新を担当。◆現在、文化人類学、動物行動学、神経生理学、民族学、言語学などを統合した「新人間学」とマーケティング戦略との融合を追及中。

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■□■「SDPメルマガ」
■■■ 第4号(2012/11/01) (c) 2012Japan Orientation
■□■ 発行者 日本オリエンテーション 大西・高橋・松本
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